地域包括ケア病棟の国・病院・患者から見たメリットと看護師の役割とやりがい
更新:2023/04/19
[転職]地域包括ケア病棟という言葉を聞いたことがありますか?
病棟と名称につくため、病院に設置されている病棟であることは分かるかと思いますが、どのような患者さんが入院しているかなどまだまだ知名度は高くありません。
ここでは地域包括ケア病棟の概要と国・病院・患者から見たメリットや回復期病棟との違い、そこで働く看護師の役割ややりがいなどについてまとめていきます。
この記事の内容はこれ!
地域包括ケア病棟とは高齢化社会のためにできた病棟である
地域包括ケア病棟は2014年に制定された病棟です。
急性期の治療を終えた患者さんが退院の準備をするための病棟になります。
日本全国で1000以上の届け出が出ている今注目の病棟になります。
地域包括ケア病棟の役割は後方支援と在宅・生活復帰支援と緊急時の受け入れの3つ
地域包括ケア病棟は急性期と慢性期の間に位置する患者さんが入院している病棟です。
そして地域医療との橋渡し役の役割も持っています。
地域包括ケア病棟について厚生労働省は3つの役割を示しています。
急性期の治療を終えた方を受け入れる後方支援の役割
急性期の治療を終えた方を受け入れるということに関して、地域の急性期医療を守る意味も含まれています。
急性期治療をする病床は限られていますが、退院先がない高齢者や要介護状態の方が入院しているケースが多く、急性期治療を受ける必要がある患者さんを受け入れることができません。
そのため地域包括ケア病棟を創設し、急性期治療後の後方支援としているのです。
在宅・生活復帰支援の役割
急性期の治療を終えたが、介護が必要になってしまい介護サービスの調整ができていない時に地域包括ケア病棟でリハビリなどをしながら退院を待ちます。
そして退院までの間に少しでも機能回復を図り、スムーズに在宅に復帰できるよう支援をしています。
ちなみに地域包括ケア病棟ではリハビリは必須ではありません。
そしてこの役割の中で知っておくべきこととして地域包括ケア病棟の在宅復帰率は70%以上であることです。
この在宅復帰率の計算は直近6か月間に自宅や療養病棟、介護施設、介護老人保健施設へ退院した患者さんと療養病棟に転棟した患者さんの合計を、同じく直近6か月間に地域包括ケア病棟を退院または転棟した患者さんの合計で割って出されます。
緊急時の受け入れの役割
地域で生活をしている方が体調を崩し、かかりつけ医が入院治療を必要とすると判断した時に受け入れるのが地域包括ケア病棟です。
例えば要介護の方が自宅や介護施設で生活をしている時に肺炎を起こしたとします。
その時に地域のかかりつけ医では治療ができず、入院してしっかりと治療をしなければならないという時にかかりつけ医が病院を紹介し、急性期の治療をお願いするというのがこの役割の意味です。
地域包括ケア病床は患者さんやその家族以外にも国や病院にメリットがある
地域包括ケア病床には患者さんやその家族がメリットを感じることができます。
また国や病院側にもメリットがあります。
そうした地域包括ケア病床のメリットをそれぞれで確認していきます。
地域包括ケア病棟のメリットは患者さんや家族どちらにもある
地域包括ケア病棟のメリットについて地域包括ケア病棟協会の会長は「地域包括ケア病棟は最大で最強の病棟」としています。
これは医療と介護の需要と供給に順応しやすいことからこう表現されました。
具体的なメリットを確認していきます。
患者さん側のメリットは急性期後の受け入れをしてもらえること
急性期病院では肺炎や骨折などの治療が終わるとすぐに退院になります。
その時に「まだ体調が安定しないのに…」「リハビリをもっとしたい」「退院後の準備ができていない」という不安を感じる患者さんが多くいます。
そうした方の受け入れ先として地域包括ケア病棟があります。
これは患者さんにとってメリットになります。
他にも自宅や介護施設で生活をしている方が体調不良によりかかりつけ医では手に負えないということがあった時にも地域包括ケア病棟で受け入れてもらえます。
これも在宅で生活している方にとって大きな安心感につながります。
患者さんの家族にも安心感がある
患者さんの家族にとっても地域包括ケア病棟があることは安心につながりますよね。
介護をしている家族にとって「もし体調が変わったらどうしよう、受け入れてくれるところはあるのかな」という不安があります。
そうした時に入院することができ、また在宅復帰に向けてリハビリなどのケアを受けることができるのもメリットになります。
国にとってのメリットは医療費削減になること
高齢化社会に伴い、医療費などの社会保障費は年々増加しています。
そのため少子化している現状では支えきれないという懸念から国では限られた資源の中で国民一人一人が医療費の使い方を最適化する取り組みを行っています。
その中の1つがこの地域包括ケア病床の転換です。
医療面でも看護必要度と同じことが言えるのですが、高度な専門医療や急性期医療を行う場合、診療報酬が高くなります。
そのため急性期病院(病棟)にいる場合には診療報酬が高くなるため、国が補助する医療費も高くなります。
一方、地域包括ケア病棟では急性期のような治療を行わないため、診療報酬は低く、国の医療費補助も少なくなります。
この医療費削減は国にとってメリットと言えます。
病院側にとっても地域包括ケア病床のメリットは大きい
また急性期と地域包括ケア病棟がはっきりと切り替わっていることで急性期の病院に手術などの治療が必要のない患者さんを受け入れなくても良いことになります。
これは急性期の医療を守ることになり、さらにその急性期で働く医師や看護師が集中して急性期の治療をすることができるのです。
これは医師や看護師の確保に苦労をしている病院側のメリットになると言えます。
地域包括ケア病棟の入院料1と2の施設基準について
地域包括ケア病床への転換により増収が見込めるという病院側のメリットがありましたが、ここで地域包括ケア病棟の入院料1と2と一般病棟入院基本料の違いも確認しておきましょう。
ちなみに地域包括ケア病棟入院料1・2は病棟単位での届け出が可能です。
一方、地域包括ケア病棟入院医療管理料1・2に関しては許可病床数200床未満の病院で病床単位での届け出が可能です。
<地域包括ケア病棟の入院料1と2の違い>
- 地域包括ケア病棟入院料1 2,558点
- 地域包括ケア病棟入院医療管理料1 2,558点
- 地域包括ケア病棟入院料 2,058点
- 地域包括ケア病棟医療管理料2 2,058点
※医療管理料には処置や簡単な検査で使用する器具などの費用も包括的に含まれている
<入院料1及び医療管理料1にのみ適用される施設基準>
- 患者さん1人当たりの面積(1人当たり6.4㎡以上)(注)入院料及び医療管理料2は面積の要件はない。
- 在宅復帰率70%以上(注)満たしていなければ入院料2及び医療管理料2の算定となる。
<入院料1及び医療管理料1と入院料2・医療管理料2に共通の施設基準>
- 専任の在宅復帰支援担当者が1名以上配置されていること
- 専従の常勤理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が1名以上配置されていること
- 患者さんにリハビリテーションを提供する場合には1日平均2単位以上提供していること
- 特定機能病院以外の保険医療機関であること
- 次のいずれかの基準を満たしている
<在宅療養支援病院・在宅療養後方支援病院・第二次救急医療機関・省令に基づき認定された救急病院>
- 一般病棟用の重症度、医療・看護必要度の基準を満たす患者を1割以上入院させている
- 各疾患別リハビリテーション料またはがん患者リハビリテーションの届け出をしている
- 看護職員・看護補助員の配置基準を満たしている(看護職員50:1、看護補助員25:1)→満たすことで配置加算が算定できる
- 地域包括ケア入院医療管理料1を届け出る場合には許可病床数 200 床未満の保険医療機関に限る。
一般病床から地域包括ケア病床に転換した施設は最低でもこれらの条件を満たしています。
地域包括ケア病棟入院料2及び入院管理料2の施設基準はほとんど1のものと変わりませんが、病室の広さや在宅復帰率に関しては規定がありません。
しかし在宅復帰率を気にしないでいいということは、病院の売り上げのためにまだ状態が安定していない様々な疾患を持つ急性期後の患者さんを受け入れることとなり、看護師はぎりぎりの人数の中、内科や外科はもちろんその他の診療科も急性期時に近い形で対応しなければないこともあります。
看護師側は幅広いスキルが必要になる上に、異なる疾患の看護に追われ、バタバタと忙しい状況になってしまうと考えられます。
中小規模病院が一般病床を地域包括ケア病床へ転換するメリット
中小規模病院が一般病床を地域包括ケア病床へ転棟するメリットには、安定した収入を確保し、収入増が見込めることです。
一般病床の診療報酬は出来高払いというものです。
これは行った治療や検査などを加算していくシステムであるため、重症患者さんが多く、高度な治療などを行うほど収入が増加します。
しかし中小規模病院では重症の患者さんはそれほど多くなく、高度な治療を行うことも少ないと考えられます。
そのため出来高払いでは収入が見込めず、経営が難しいケースもあります。
一方、地域包括ケア病床での診療報酬は簡単な検査や治療はその診療報酬に含まれています。
そのため一般病床よりも収入が見込めるため、地域包括ケア病床への転換をすることで増収が見込めます。
地域包括ケア病床では手術や麻酔、嚥下機能療法、透析などの人工腎臓治療をする場合には加算ができますのでさらに収入増が見込めます。
地域包括ケア病棟と回復期病棟の違いは疾患や入院期間、リハビリ時間の違い
地域包括ケア病棟と似ているのが回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)になります。
しかしこの2つの病棟には3つの違いがあります。
受け入れる疾患が違う
まず1つ目の違いとして、受け入れる疾患が違うということです。
地域包括ケア病棟では受け入れる疾患に決まりがありません。
そのため肺炎などの内科的疾患から骨折などの外科的な疾患など幅広く受け入れ、医療を提供しています。
一方、回復期病棟では脳梗塞や脳出血などの脳血管疾患、大腿部頚部骨折など受け入れに関して疾患を限っています。
これは回復期病棟が寝たきり予防のため、在宅への復帰を目的とし、集中的にリハビリをすることを目的としているためです。
入院期間にも違いがある
もう1つの違いとして入院期間の上限の違いがあります。
地域包括ケア病棟では60日以内、回復期病棟では30日~90日以内とされています。
回復期病棟では脳梗塞などの脳血管疾患や大腿部頚部骨折などの場合には発症または手術後から90日以内、股関節や膝関節の神経や筋などの損傷の場合には1か月以内と規定されています。
リハビリを集中的にするのが回復期病棟
またリハビリにも違いがあります。地域包括ケア病棟ではリハビリを必須としていません。
地域包括ケア病棟でのリハビリは平均2単位となっています。
一方、リハビリを目的としているのが回復期病棟なので毎日2単位以上のリハビリを受けており、必要に応じてその単位は増えていきます。
ちなみにリハビリの単位は20分となっていますので地域包括ケア病棟では平均40分、回復期病棟では40分以上となります。
地域包括ケア病棟では看護必要度に応じて看護職員が配置されています。
看護必要度とは患者さんの高度医療の必要さなどを数値化したもの
看護必要度は厚生労働省が管轄しているものです。
患者さん1人1人の疾患や病状の違いに応じて看護サービスの量を評価する指標となっています。
地域包括ケア病棟の看護師の役割とやりがい
地域包括ケア病棟における看護師の役割はやはり在宅復帰をするための支援が中心になります。
特に地域包括ケア病棟では退院支援を専門とする退院調整看護師と呼ばれる看護師を配置していることもありますので、そうしたことに興味がある方にとってはやりがいのある病棟になります。
在宅復帰に向けての支援をする役割
地域包括ケア病棟では60日以内に自宅復帰または介護施設への入所などで退院をしなければならない決まりがあります。
そのため入院している患者さんに対してはスムーズな在宅復帰に向けてのケアが必要になります。
具体的には、退院後の生活を具体的にイメージし、患者さん本人や家族と一緒に動いていきます。
介護が必要な状況になった時にはどのような介護サービスを必要とするのかを検討し、調整するなど在宅復帰へ向けて看護師が中心となって他職種と連携しながら進めていきます。
リハビリの専門職と連携し、必要なリハビリの計画から実施まで行う
地域包括ケア病棟では必須ではありませんが中にはリハビリを行っている患者さんもいます。
入院している疾患によってはリハビリを必要とすることがありますので、そうした時には担当の理学療法士や作業療法士などの専門スタッフと連携し、リハビリの計画を立てます。
そして日常生活の中でもリハビリを取り入れ、スムーズな在宅復帰を目指します。
地域包括ケア病棟の看護師は違う視点での看護ができるやりがいがある
地域包括ケア病棟の看護師の役割を見てお分かりになったかと思いますが、他の病棟と比較して地域包括ケア病棟の看護師は医療行為ということよりも患者さんがスムーズに在宅復帰できるような支援を行うことが中心になります。
そして在宅復帰に向けてのリハビリなどを行うなどのケアが中心となります。
そのため患者さんと関わる時間が長くなります。
入院中に何をすると患者さんがスムーズに退院できるのかということを真剣に考えるのは地域包括ケア病棟の看護師の役割であり、他の病棟では経験できない仕事です。
医療行為は急性期と比較した時に少ないのですが、その分患者さんと向き合う時間が多くなります。
こうしたことは地域包括ケア病棟で働く看護師のやりがいになるでしょう。
まとめ
ここまで地域包括ケア病棟についてまとめてきましたがいかがでしたか?
地域包括ケア病棟は2014年に制定された比較的新しい病棟の形です。
高齢化社会で必要な病棟でもあり、今後需要が高まると推測されています。
そのため地域包括ケア病棟における看護師の求人も増加していくでしょう。
地域包括ケア病棟の看護師のやりがいは患者さんとのかかわりが密になることであり、退院後の生活を具体的にイメージして必要なケアをすることです。
医療行為は急性期とは違い、あまり経験することはありませんがやりがいはたくさんあります。
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