精神科 看護師の役割は、精神科患者さんが抱える疾患による苦痛と社会的苦痛を受け止め、ゆっくりと側で見守り支えること
更新:2023/04/06
[精神科]精神科の看護師の役割は、他の診療科の看護師と比べて、どのような違いがあるのでしょうか?精神科は楽だ、なんて看護師の間で話されたりもしますが、果たしてどうなのでしょう。
ここでは、精神科の看護師に求められる役割を確認し、実際の精神科看護の現場で、看護師がどのように役割をこなしていっているのかみていってみましょう。
この記事の内容はこれ!
- 1 精神科 看護師の役割は医師に対しては毎日の観察から得られる情報の提供と安全な医療処置提供のためのサポートをすること
- 2 精神科 看護師の役割は患者さんに対しては安心して休息できる環境を提供し、その人の領域を守ってあげること
- 3 精神科 看護師の役割は患者さんの家族に対しては不安を受け止める窓口となること
- 4 精神科 看護師の役割は精神保健福祉士に対して患者さんの抱える社会的問題を解決していくサポートをすること
- 5 精神科 看護師の役割は作業療法士に対しては患者さんの生活上の問題点を解決していくうえでお互い相談し合えるパートナーであること
- 6 精神科 看護師の役割は同僚看護師に対しては意見交換が自由にできるチーム作りを目指す同志であること
- 7 まとめ
精神科 看護師の役割は医師に対しては毎日の観察から得られる情報の提供と安全な医療処置提供のためのサポートをすること
医師に対する看護師の役割は、診療の補助です。これはどこの診療科でも同じですね。精神科でいう診療の補助とは、患者さんの伝えられない思いや自覚のない症状を把握し、医師に報告することが大きな部分を占めることになります。
精神科にいる患者さん達は、日によって、時間によって、訴えが変わってくる事もあります。医師との問診を拒否されることもあります。
精神科の看護師は、毎日の観察から患者さんの全体的症状を把握し、医師が問診から得られる情報を補強、又は修正していく役割を持っています。
そのことによって、医師は的確に患者さんの病状を把握し、薬剤処方や精神療法を行っていくための判断材料を得る事ができるのです。
もちろん、精神科における医師の診療は、問診だけではありません。薬物による副作用で転倒してしまったり、精神運動興奮によって、又は自傷行為によって、身体的に負傷してしまうこともあります。
そんな場合、縫合等の処置が必要になってくることもありますが、精神的症状により落ち着いて処置が受けられない場合も多いです。
看護師は、患者さんの安全を確保し、落ち着きを与え、医師による適切な医療処置が、正確・安全に患者さんに提供されるよう、医師をサポートしていく役割も果たしていく必要があります。
精神科 看護師の役割は患者さんに対しては安心して休息できる環境を提供し、その人の領域を守ってあげること
精神科の看護師の役割としてよく言われているのは、優れたコミュニケーション能力を持って患者さんの側に寄り添うこと、ではないでしょうか。
これは紛れもない事実ですが、寄り添うというのは、いつもいつも近くで話を聞いている、ということではありません。
例えば、統合失調症の患者さんが幻覚や妄想の話を次々と話してきたら、看護師は側に寄り添って話を聞くべきではありません。そうすることで幻覚妄想の症状を煽ってしまうこともありますし、興奮状態へと導いてしまうかもしれません。
また、気分障害で躁状態である場合、人との接触からくる刺激を避け、落ち着いてもらう事が必要ですから、延々話を聞いていたのでは逆効果です。また、鬱状態であった時には、あまり人と顔をあわさず、1人で静かにしていたい時期もあるでしょう。
精神科の看護師の大切な役割の一つは、患者さんそれぞれが求める心地よい距離感を探り、その場所からその人をただ見守る、という事だと思います。
まずは心地よい落ち着いた環境を得てもらうことが一番です。コミュニケーションとは何も言語的なものに限られたものではありませんから、看護師がいつも側にいる、守っている、ここは安全な場所だ、ということは、私達が与える環境から実感してもらえるでしょう。
看護師は、患者さん達の個人的領域を無理には侵しません、ただ患者さん達を守るために、安全な環境を提供しています、ということを患者さん達に示すことで、安心して治療に向かってもらうことができるのです。
精神科 看護師の役割は患者さんの家族に対しては不安を受け止める窓口となること
精神科の患者さんの家族の方々の中には、自分の家族が精神科に通っている、入院しているということを、職場の方や近所の方に内緒にされている方々がいます。もちろんそうでない方々もいます。
精神科というものの社会的イメージが未だにあまり良くないこともあり、家族の方は孤立しやすい状況にあります。このような背景を考えると、精神科の看護師が、家族が抱える大きな悩みを打ち明けられる一番の窓口になる役割を担う事は、とても重要な大きな役目であることがわかります。
患者さんの家族は自分達を責める傾向があります。我が子なのにどう接したらいいのか分からないなんて、親失格だ。今までの自分の育て方が悪かったからこうなった。等は、よく耳にする患者さん家族の心情です。
まずはゆっくりと、沢山の溜め込んだ気持ちを吐き出してもらう必要があります。
看護師はゆっくりと話を聞く態勢があることが伝わるよう、落ち着いた対応をしていくことが大切です。
また、精神疾患を抱えた人達の社会復帰には色々な問題がでてきます。家族の方達はもちろんそこにも大きな不安を持っておられます。看護師は、他の専門職と家族との橋渡しの役割も果たしながら、社会復帰に向けての計画を進めていく必要があります。
看護師と患者さんの家族との良好な関係が、患者さん自身の早期退院、社会復帰につながっていきます。看護師として常にゆとりを持った対応を心がけ、患者さん家族を受け止めていくことが大切です。
精神科 看護師の役割は精神保健福祉士に対して患者さんの抱える社会的問題を解決していくサポートをすること
精神科患者さんの社会復帰に伴う問題は多く、たくさんの病院が退院促進に積極的に取り組んでいるものの、まだまだ社会的入院で数十年病棟生活をしているという人も珍しくありません。
社会復帰に向けて計画を進めていく時に、看護師が積極的に協力し合う必要があるチーム医療パートナーが、精神保健福祉士です。
退院後はどのような福祉制度が受けられるのか、必要な社会資源をどう取り入れて退院につなげればよいのか。患者さん本人が精神保健福祉士からアドバイスを受けながら、退院に向けて話を進めていきます。
しかし時々、患者さん自身が、自分の抱える社会福祉的問題に無頓着であったり、理解が難しかったりで、話し合いが上手く前に進まないこともあります。
看護師は、精神保健福祉士に対し、患者さん自身からは得られない必要な情報を補ったり、退院への不安な気持ちを抱える患者さんの気持ちを汲み取ったりしながら、患者さんと精神保健福祉士の間を取り持ち、話し合いが円滑に進められるように援助していきます。
退院への調整がスムーズに行われるか否かは、患者さんが社会復帰に向ける気持ちに大きく影響します。看護師と精神保健福祉士が円滑なチームワークで退院調整を進めていくことで、患者さんが退院に対して抱く不安を、少し軽減することができるのです。
精神科 看護師の役割は作業療法士に対しては患者さんの生活上の問題点を解決していくうえでお互い相談し合えるパートナーであること
精神科とリハビリテーションが結びつかない人も多いかもしれませんが、精神科領域においてもリハビリテーションはとても大切な治療の一環です。
一対一の個人作業療法では、地域の中で生活する上で必要な、例えば電車に乗る練習や、買い物の練習、料理の練習もしたりします。グループ作業療法では、集団生活に必要なマナーを勉強しあったり、気分転換を兼ねてカラオケをしたりもします。
看護師の役割としては、病棟での患者さんの様子を情報として作業療法士に伝えること。
日々の病棟生活の中で気付いた患者さんの生活上の問題を提起し、作業療法により訓練していくことができるかどうか相談していくこと、等があげられます。
精神科の患者さん達は、社会で生活していくにあたり難しい問題が沢山でてきます。疾患の症状に左右された患者さん達の生活習慣は、世間には受け入れ難いものであることもありますから、作業療法によって適切な生活習慣を身につけていくことが大切なのです。
看護師が日々観察し、生活上の問題点に気付く事で、作業療法士にリハビリテーションの課題を提供することができ、患者さんは、社会生活に必要な技能を訓練によって習得していくことができるのです。
精神科 看護師の役割は同僚看護師に対しては意見交換が自由にできるチーム作りを目指す同志であること
看護師の間での密な情報交換は、診療科に関係なく大切なことですね。精神科においては、この看護師間の情報交換の必要性は、他の診療科以上に充実させる必要があると言えます。
精神科疾患は、数字として見える検査データや、目でみてわかる皮膚状態などとは違い、患者さんの言動から、その病状を判断していかなければなりません。
つまり、個々の看護師によって、それぞれ違った病状判断をすることがあるのです。そのため、日々お互いに意見を叩き合わせる必要があります。そのそれぞれの違った意見からアセスメントを行い、今の患者さんの状態把握と今後の看護方針が決められていくわけです。
そのため、看護師間で良好な関係を築き上げ、意見交換がスムーズに行われる病棟環境を作っていくことが大切になってきます。
意見をすることに躊躇いを感じるような環境では、患者さんに統一した看護が提供できないことになってしまいます。
また、精神科病棟では、患者さんからの攻撃的、暴力的な言葉や行動によって、看護師自らが精神的ダメージを受けてしまう事が起こりえます。
患者さんに対してネガティブな感情が沸き起こることもあるでしょう。
そんな時に、同僚として、話を聞ける、話ができる、そんな仕事のパートナーでいる事が、それぞれの看護師に求められる大切な役割です。
精神を煩った患者さん達は、とても繊細で敏感です。看護師の間でよい空気を作り出す事は、患者さんに安心できる治療環境を提供することに直に結びついてきます。そのことを念頭に置き、看護師それぞれがサポートし合う、よいチームを築き上げていくことが大切です。
まとめ
精神科の看護師の役割をみていくと、精神科では看護技術の手技的な業務を果たす役割はやはり少ないことがわかります。
それをプラスに捉えるかマイナスに捉えるかは、その人次第です。どのような看護をしていきたいのかということによっても、その見方は変わってきますね。
私は、新卒で精神科に就職しました。わりと珍しいパターンだと思います。最初はただただ興味深く、人間の脳の無限とも言える能力に圧倒され、人間の持つ精神の深さに溺れそうになりました。
仕事はとても面白かったですし、たくさん勉強もしました。しかし途中から、少し仕事にしんどさを覚えるようになりました。
毎日毎日、患者さんのよくわからない言動を見たり聞いたり。私は何をしているんだろう、もっと「何か」がしたい。何か形として分かる事がしたいと、そう思ったんです。自分の持つ役割が、ここではとても小さい、そんな気がしました。
その後転職して、身体的援助の多い、看護技術を活かせる病棟で勤務をしました。しかしそこで感じたのは、ただ業務をこなしていくだけの、機械的で無機質な仕事内容による疲労感でした。
ある精神科医の先生が、病棟スタッフがただゆっくりと病棟を歩くことを「病棟を耕す」事だと言っていました。その事を思い出して、私はやっぱりそういう看護がしたいなと、転職を少し後悔したりしました。
精神科では、時間にバタバタと追われる業務というのはあまりありません。もちろん急性期病棟と慢性期病棟では違いますし、他にも色々と専門病棟がありますから、場所によって異なってはきます。
しかし、時間をかけて忍耐強く患者さんの回復を待つということは、精神科看護においては基本です。ゆとりをもって仕事に向き合えますから、今の仕事の多忙さに疲れを感じていらっしゃる方には、精神科への転職はおすすめできます。
じっくりと患者さんと向き合っていくので、人を観察する眼も育ちます。それは今後、他の診療科に転職した際にも必ず役に立ってくる技術です。
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なかなか普通に足を運ぶ事ができない病院ですから、プロの転職コンサルタントと相談して、自分の希望にあった病院を探してもらうのがよいと思いますよ。
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執筆者情報
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