精神科で働く看護師が持っていて役に立つ看護師以外の資格って何だろう
更新:2023/04/11
[精神科]最近、看護師が看護師以外の資格を取得するケースが増えてきています。看護師は仕事において、あらゆるタイプの人達と関わりを持ちますから、活かせる資格の種類も多様なのでしょう。
では、特に精神科で働く看護師が持っていると役に立つ資格とは、どのようなものになるのでしょうか。ここで少し紹介していきましょう。
この記事の内容はこれ!
精神科の看護師が活かせる資格は多種多様
精神科の看護師が活かせる資格を考えてみた時、「あれとかこれとか・・それにあれも!」と、次々と頭に浮かんできてしまいます。逆に精神科の看護師が活かせない資格の方が少ないのではないかと思ってしまうくらいです。
精神科の患者さんは、日常生活全般において訓練が必要な場合が多いです。入院が長期に及ぶ事も多いですから、気分転換活動もとても大切になってきます。そう考えると、精神科は看護師が最も多様な資格を活かすことのできる分野の一つだと言っても問題ないように思います。
例えば調理師の資格を持っていれば、患者さんに簡単・安全な料理の方法を教える事ができます。書道や生け花、茶道の免状を持っていれば、患者さんと一緒にレクリエーションとして楽しむ事ができます。アロマやマッサージももちろん喜ばれるでしょう。
精神科で役に立つ資格を挙げ出すときりがなくなってきてしまいますので、ここでは、「精神を癒す・ココロの看護」という部分により関連した資格をピックアップしていくことにします。
精神看護専門看護師
精神疾患を持つ患者さんに対して、より高度な知識と技術をもって看護を実践することができる看護師に与えられる資格が、精神看護専門看護師になります。
また、精神疾患患者さんに限らず、様々な身体的疾患に悩まされている患者さんのココロのケアや、医療者と患者さんの関係をつなぐための橋渡しのような役目を果たす専門看護師の資格もあり、リエゾンナースと呼ばれています。
リエゾン(Liaison)とはフランス語で「関係」「連絡」といった意味を持ち、リエゾンナースは精神看護専門看護師の中の一つの分野です。つまり、精神看護専門看護師の中には、このリエゾン看護を専門としている人達もいます。
精神看護専門看護師の資格を得ることで、より一層踏み込んだ精神科看護・ココロのケアを患者さんに提供することができますので、大きなスキルアップに繋がります。同僚看護師へのアドバイスができる立場に就くことにもなるでしょう。
一般の看護師と精神看護専門看護師との処遇の違いについてが気になるところですが、病院によって様々ですので何とも言えません。数万円の資格手当が付く病院が多いようですが、他の看護師と同じ処遇である病院もあります。
また、リエゾンナースとして働くのであれば、資格を活かす場所は、精神科病院、精神科病棟だけに限定されることはありません。
リエゾンナースは、どのような医療機関でも配置することができます。総合病院で病棟に配属されることなく、フリーのリエゾンナースとして、不安を抱える患者さんの話を聞いたり、医療スタッフとの間に立って関係を取り持つ役割を果たしたりして仕事をされている方も、たくさんいらっしゃいます。
取得要件
精神看護専門看護師の認定審査を受けるための受験資格
- 看護師免許を取得していること
- 看護師として5年以上の実務経験があり、そのうちの3年以上が精神看護分野での経験であること
- 看護系大学修士課程修了者であり、専門看護師教育課程基準に定められた所定の単位を取得していること
以上の受験資格を満たした上で、精神看護専門看護師のための認定審査の申請を行います。認定審査には一次と二次があり、それぞれ書類審査と筆記試験になっています。合格率は90%以上です。
なお、リエゾンナースを志望する場合は、精神看護分野での3年以上の経験は、精神科である必要はありません。リエゾン看護の経験実績が3年以上あれば良いので、その内容を明記すればクリアできます。
バックアップ体制
医療機関からのバックアップを希望する場合は、専門看護師の資格取得に対する支援制度の整った病院を探す必要があります。
病院の制度によりますが、バックアップ体制の手厚い病院では、学費等の必要経費を全額負担してくれる所もあります。一定額の支援金をもらえるところや、無利子での修学金制度をとっている所もあります。
他にも、学校への通学日を有給扱いとして給与が与えられる所や、資格取得後の資格更新費用まで支給してくれる所など、支援の内容は様々です。
支援を受けるにあたっては、資格取得後に一定期間勤務する等の条件があることが殆どですから、しっかりと支援制度を理解し、吟味していく必要があります。
取得までの期間と費用
実務経験5年と大学院2年、合わせて7年が最低でも必要ということになりますが、自分がどこから始める必要があるかによって変わってきますね。
学費は大学によって差がありますが、入学金と学費で200万程度が平均的です。その他、通学のための交通費や、引っ越しが必要な場合はその経費、教科書代など、負担額はかなり大きなものになってきます。
また、大学院卒業後に、精神看護専門看護師認定試験の審査料として約50,000円。精神看護専門看護師登録手続き料として約50,000円が必要です。
精神看護認定看護師
認定看護師制度は日本看護協会が主催していますが、精神看護認定看護師だけは日本精神科看護協会が主催しています。そのため、他の認定看護師とは取得に対する条件等が変わってきます。
精神看護認定看護師の認定は、以前は細分化されており「精神科薬物療法看護」や「うつ病看護」など、10つの認定項目に別れていました。
しかし、平成27年にこれらの専攻領域は一つに統一され、より統合的に臨床上の問題に対応していける認定看護師の育成が始められました。
また、平成27年の制度改定により、受験資格も厳しくなり、取得単位数も増え、より難易度の高いものとなりました。一層ハイレベルなスキルアップを目指せる資格になったと言えるでしょう。
取得要件
精神看護認定看護師の認定審査を受けるための受験資格
- 看護師免許を取得していること
- 看護師として精神科看護の経験が5年以上あること
教育機関での研修は、短期間で取得する8ヶ月コースと、ゆっくり取得する2年間コースがあります。
以上の受験資格を満たしたうえで、精神看護認定看護師の認定試験を受けます。試験は、小論文、筆記試験、口頭試問の3つです。合格率は約90%
バックアップ体制
バックアップ体制に関しては、精神看護専門看護師の場合と変わり有りません。病院によって支援制度の有無や、その充実具合は変わってきます。
取得までの期間と費用
期間は上記に挙げた通り、最短で5年の実務経験と8ヶ月の研修ですね。8ヶ月の研修と同時進行で実務経験を積むことができますので、最短コースは5年ということになります。
費用は、日本精神科看護協会の会員か否かで変わってきます。会員の場合、研修受講料や認定審査料など全て含めて580,000円ほど。非会員でしたら、880,000円ほどになります。
また、研修は東京と京都でのみ開催されていますので、交通費や宿泊費が必要になることもあります。
精神対話士
精神対話士とは、話を聞くことに対する専門的技術を持ち、対話を通してココロに問題を抱えている人のケアを行い、精神的な支えとなることを専門とする人達です。
一般財団法人メンタルケア協会によって認定されている資格であり、「話を聴くことのプロフェッショナル」と言って良いでしょう。
精神対話士が精神科病院で活躍できることは言うまでもありませんが、精神科以外の一般身体科でも、もちろん資格を活かすことができます。
人の話を聞く事の専門家ですから、患者さんとの関係を築いていくうえで、いつでも誰とでも、とても役に立つ技術だと思います。
また、この資格を活かす事ができる場所は医療現場に留まりません。福祉施設や一般企業、学校や災害被災地など、多様な場所で資格を活かす事ができますので、仕事の幅は大きく広がっていくでしょう。
取得要件
年齢、性別、職業に関わらず、誰でも受験することができます。
メンタルケア・スペシャリスト養成講座の基礎課程と実践課程を修了し、精神対話士選考試験に合格すれば資格を取得できます。
養成講座と選考試験は全国8カ所で実施されており、選考試験では、集団面接と個人面接を受けることになります。
バックアップ体制
バックアップ体制は特にないと思いますが、病院と相談してみるのも良いかと思います。
取得までの期間と費用
メンタルケア・スペシャリスト養成講座の基礎課程は5日間で130,000円。メンタルケア・スペシャリスト養成講座の実践課程は3日間で60,000円です。
精神対話士選考試験には受験料は必要ありませんが、選考試験の合格率は15%と難関です。一度で合格できず再受験を希望する場合は、もう一度メンタルケア・スペシャリスト養成講座の実践課程を受講しなければなりませんので、再度受講料が必要になってきます。
音楽療法士
音楽を用いて心身の問題を改善し、生活の質の向上やストレスの軽減、疼痛の緩和、日常生活能力の向上等を目的として行なわれるプログラムが音楽療法です。
精神科では、この音楽療法を定期的に取り入れている所が少なくありません。また、高齢者施設や身体・知的障害者入所施設、緩和ケア病棟など、音楽療法は広く取り入れられていますので、音楽療法士が活躍できる場所も様々です。
実際のところ、音楽療法士だけで仕事をするには、求人数も少なく、厳しい現状があります。しかし、看護師の資格と音楽療法士の資格とを併せて活用するのであれば、新たな角度から患者さんの支援に関わることができるようになり、看護の幅を大きく広げることにつながります。看護師の仕事が、より充実したやりがいのあるものになっていくのではないでしょうか。
取得要件
音楽療法士の資格は、日本音楽療法学会が認定する認定資格です。この資格の取得方法には以下の二通りがあり、それぞれのコースで受験資格を得る方法が変わってきます。各コースの受験資格要件は以下です。
①認定校コース
- 日本音楽療法学会の定める認定校を卒業していること(専門学校3年、又は大学4年)
②一般コース
- 高等学校卒業後、2年以上の教育(大学、短期大学、専門学校、高等専門学校)を受けていること
- 臨床経験を5年以上積んでおり、うち2年が音楽を利用した臨床経験であること
- 日本音楽療法学会の正会員であること
- 音楽試験に合格していること(ピアノの実技と音楽理論)
- 必修講習会(2年半)をすべて受講していること
どちらかのコースで受験資格を満たした後、音楽療法士の資格審査試験を受けることができます。
資格審査は筆記試験と面接試験があります。合格率は44%。
バックアップ体制
バックアップ体制が取り決められている病院はないのではないでしょうか。しかしながら、取得までに費用のかかる資格ですから、一度病院側と相談してみると良いかと思います。
取得までの期間と費用
資格取得までの道のりは長いです。認定校コースでも最低3年、一般コースだと臨床経験を含めて最低7年半です。
認定校に行く場合は、学校によって学費が変わってくるので確認が必要です。一般コースの場合、必修講習会の費用が240,000円、音楽試験受験料が10,000円です。
資格審査試験は、筆記試験と面接試験で各々10,000円。また、認定料に30,000円が必要です。
笑い療法士
「笑い」には素晴らしい数多くの効果が期待されています。ストレスを取り除き前向きになる、免疫力を高める、疼痛を緩和するなど、さまざまな研究結果が発表されてきています。
笑い療法士とは、病気や悩みを抱えてなかなか笑えない人達から笑いを引き出し、笑いの効果によって自己治癒力を高め、ストレス緩和に繋げていく技術をもった人達のことです。
この笑い療法士は、特別にパフォーマンスをして笑いを誘うという方法ではなく、日常生活の中で温かな笑いを引き出していくことを目的としており、癒しの環境研究会という社団法人が認定をしています。
「笑い」は癒しをもたらし、物事をプラスの方向に導く力を持っています。そんな「笑い」は、ココロを病む患者さんにとって、とても素晴らしいプレゼントなのではないでしょうか。
また、「笑い」の力で人を癒す笑い療法士の活躍の場は、もちろん精神科に限定されるものではありません。人と向かい合って話をする場面で、いつでもその力を発揮することができます。
仕事でもプライベートな場面でも、いつでも活かせる笑い療法士の資格。取得には一考の価値がありそうですよね。
取得要件
笑い療法士の資格には3級、2級、1級と段階があります。
資格取得に対する条件は以下の4つ。
- 癒しの環境研究会の理念に共鳴し建設的な意見が言える、主として医療・福祉関係の人
- 気持ちに余裕のある人
- 自己顕示欲がなく、相手が主役と思える人
- その場をホッとさせる笑いを目指せる人
上記の条件を満たしている人は、書類審査を受けることができます。書類審査に通過できた人は、笑い療法士講習を2日間受講し、その後、講習の実践報告を含めたフォローアップ論文を提出します。その論文をもとに、笑い療法士認定の可否が決定されます。
バックアップ体制
病院と相談してみると、何か援助が得られるかもしれません。
取得までの期間と費用
書類審査の手数料が2,000円。2日間の講習が25,000円。認定料が10,000円です。講習は東京で行われているので、交通費や宿泊費が必要になることもあります。
まとめ
いかがでしたか?比較的難易度の高い資格が多くなってしまいましたが、これらの資格の取得によって、看護師としての仕事がより豊かな広がりを持つことは間違いないと思います。
しかし、どのような資格にしても、取得のためには少なくない費用と時間がかかってしまいますよね。仕事を休まないといけない日もでてきますし、同僚の理解がなければ、肩身の狭い思いもするでしょう。
それに、せっかく取得した資格も、周りの環境が整っていなければ、上手く活かすことができません。そんなことでは、資格取得のために費やしたお金や時間が無駄になってしまいます。
そんな思いをしないためにも、資格の取得や、資格を活かす場所の提供に関して、あなたの理想とする条件の整った職場を探すことがとても大切になってきます。
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執筆者情報
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